千葉市美ワークショップ、ありがとうございました

千葉市美術館でのワークショップ「はじめての銅版画 ー エッチング、線から生まれる表現の魅力」が終わりました。
まずは落選された方には大変申し訳ありませんでした。なかには昨年から三回連続で落選の憂き目にあっている方もいるようで、この場を借りて重ねてお詫び申しあげます。

さて、当日の講座は一同が静まりかえる多少のアクシデントと、これまた一同が静まりかえる講師の寒いトークも交えつつ、参加者の熱意と抜かりない美術館スタッフとボランティアスタッフ一同の献身のおかげで、時間内に全員が各々お試しに留まらない自分の「作品」を刷り上げていました。
銅版画制作は最後の最後、刷るまでどうなるかわからないというドキドキの中で進みます。絵画制作は作品に直接手を入れていくので今の時点で作品がどのような状態かは見ればわかります。しかしながら版画は手を入れていくのは版ですので、当然それ自体が作品ではありません。銅版画は版ができたらインクを詰め、紙を乗せ、プレス機を通してめくり上げた時に初めて作品が生まれてコンニチワなのです。刷ってみないとわからない‥そんな開けてビックリの不安と驚きも銅版画制作の面白さでもあり魅力のひとつです。

今回のワークショップ は「亜欧堂田善 江戸の洋風画家・創造の軌跡」の関連イベントとして企画されました。展示を見ると田善さんも銅版画の魅力にハマってしまったんだなぁというのがよくわかります。緻密な線描表現だけが優れたところではありませんが、なんとも緻密で精密な線のリズムが気持ちいいのです‥西洋の模写から一歩踏み込んだ彼ならでは、そして根底に流れる日本人的職人の美意識が偲ばれます。細部をおろそかにしない。そして遊び心もあって画面構成もキャラもどことなくユーモラスで洒脱です。
まだ日本では誰も「作品」体系として確立していなかった銅版画‥数多の苦難の制作や出会いを経て、彼の人生が50歳を過ぎてから大きく開けてキラキラし始めます。銅版画制作に携る末裔としては温故知新を超えて、パイオニアとしての生き様と出会いがとても眩しく感じられます。

そして田善さんにも「はじめての銅版画 」があったはずです。初めてプレス機に版を通して紙をめくった時の驚きは如何程であったでしょうか。私自身にもささやかながらそれは確かにありました。かれこれ35年前くらいになりますが‥その時の少なからぬ驚きと喜びにより今に至ると言っても過言ではないでしょう。今回参加者の皆さんが夢中になって刷り上げた表情から、そんな時空を超えた銅版画制作の感動共有にグッとくるものがありました。

参加者の皆さん、そしてスタッフの皆さん元気をいただきありがとうございました。胸に刻むことの多いワークショップでした。
いつの日にか銅版をはさんでまた会いましょう!

※千葉市美術館のブログからもワークショップ の報告が掲載されております。
https://www.ccma-net.jp/blog/23359/

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